生活習慣について

一流の人は、ハードワークでも心が折れない心の筋肉を鍛えるための方法とは?

逆境や困難、強いストレスに直面したとき、竹のようにしなる弾力性、適応力、そしてネガティブ感情を断ち切って次に向かう回復力──。そんな心の筋力「レジリエンス」強化の実践本が人気を得ている。『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(SBクリエイティブ)を書いた久世浩司氏に話を聞いた。

──欧米では30年以上前から研究されているそうですが、日本で認知が進んだのは最近のことです。

忍耐や我慢強さを美徳とする日本人の武士道精神で間に合っていたからでしょうね。逆境や困難を乗り越える力を、日本では精神論や根性論で片付けてしまって、心理学という科学には昇華させてこなかった。

この本はまじめな頑張り屋に読んでほしいと思って書きました。実際ビジネスパーソン以外でも、介護士や教師、接客業などストレスの多い職業の方が読んでくれています。

実は最近の日本の、ハードに働くことを時代遅れとする風潮に違和感を感じていました。海外から眺めていると、どこの国でも成功している人や企業にはやっぱりハードワーカーが多い。だらだら長時間働くだけのロングワーカーじゃなく、働くことと生活を楽しむことのメリハリのあるハードワーカーです。懸命に働くハードワーカーがリスペクトされにくくなってる日本を見ていて、このままでは人も企業も国も弱ってしまうぞと危惧していました。

ネガティブ感情をどう絶つか

──そのレジリエンスを鍛える法の第一が、ネガティブ感情の連鎖をその日のうちに断ち切る、ですね。

実はこの第一歩でつまずく人が多いんです。惰性で何もしない人も多い。一晩寝たら気分一新、とよく言いますが、ネガティブな思考・感情には強力な粘着性があるんですよ。睡眠は確かに重要だけど、根本的な心の疲れは解消されない。いい睡眠とは別の習慣を取り入れないと、粘着質なネガティブ感情はなかなか離れてくれません。

その悪循環から脱出する方法として挙げたいのが、疲労感、悲しみ、憂鬱感、恐れ、嫉妬、羨望などの「感情のラベリング」です。モヤッとした自分の感情にあえて名前をつけることでより“見える化”していくと、対処すべき対象がハッキリします。体調不良の原因を、胃腸とか、心因性のストレスとか医者から聞けば、それだけで半分解決したようなもの。同様に、今自分が消耗している理由には、まず嫉妬があり、次に怒りがあり、不安につながって、その結果憂鬱感が増大している、とラベリングしていくことで、モヤモヤな気分を頭で理解できる。一歩身を引いて感情の整理をするのです。その中で最もしつこくこびりついていた感情にどう対処するか考えればいい。

──2番目が「気晴らし」です。

ストレスの宵越しをしないためにお勧めなのが、歩く行為と呼吸の流れに意識を集中させる早足散歩。運動や音楽、就寝前の呼吸法、感情を文字にして書き出すなどもいい。その中で自分が好きなものを選ぶと長続きします。運動が好きなら就寝前の簡単なストレッチとか、その日がダメなら週末に走るなどして、せめて翌週に持ち越さないことです。有酸素運動は、粘着性のあるネガティブ感情を別の感情にシフトさせるのに有効。出口のない堂々巡りから別の意識にスイッチしていたら、うまく気晴らしができた証拠です。

要は、しつこいネガティブ感情をまずラベリングして、自分が何にとらわれているかに気づき、そこから別の意識にシフトさせる流れが重要。モヤモヤが続くことを意図的に断ち切ろうとすると、かえってそっちに焦点が行ってしまうから、全然別のことをしたほうがいい。

──気晴らしといえば、手っ取り早いのが飲み会、カラオケ……。

するなら職場とまったく関係ない友人や家族、一人でならいいと思います。純粋に歌を歌えば気晴らしになる。飲み会も、食事自体は会話をしながら楽しむ体験だから、気晴らしにはならないけど、ポジティブな感情は高まります。昔話で盛り上がったとか、いい友人がいてくれたことに感謝するとかで、心という器の中身がネガティブからポジティブに置き換わる。面白いことにネガティブは右前頭葉、ポジティブは左前頭葉とそれぞれ使う脳の部位は違ってて、両方が同時に活性化することは基本的にない。これは脳科学的にも証明されている。実は左前頭葉が活性化していて幸福感の高い人が、いちばんレジリエンスのある人なんです。

サポーターの存在が重要

──立ち直る力の鍛錬といっても、独りストイックに追求するのではなく、サポーターを持つ大切さを強調されていたことが、興味深かったです。

レジリエンスの強い人は必ず周りにサポーターを持っていますね。一人では限界があります。

P&G時代の私のオーストラリア人上司がまさにすばらしいサポーターでした。困ったときは躊躇せず「I Need Your Help」とメールにタイトルをつけて助けを求めてください、最優先で目を通しアクションを起こしますから、と部下に伝えて回りました。こういう援助希求力、人の助けを求める、人の助力を自分から主体的に求めていく態度・行動がないと本当に困難なときやっていけません。そういう行為を許容する文化も必要です。そのオーストラリア人上司は自分が率先して、私もあなたが必要と言う、あなたも言ってください、という文化を企業の中で作り上げた。それが五月雨式に拡散していって、みんなが援助希求力を持つ強い組織に変わっていきました。

──助け合う組織は創造力が高いという研究成果もあるそうですね。

『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』 SBクリエイティブ(1300円+税/255ページ)

米シリコンバレーや西海岸で成長している企業は、積極的に社内コミュニティを取り込んでいます。たとえばピクサーでは、クリエーター個人が仕事に没頭する空間はあくまでクローズドに、共有空間は天井も高くオープンにして、「一人ではない」という空気を演出しています。

日本ではマイクロソフトもオフィスを移転したとき、オフィス内の至る所に3、4人用のちょっとした小会議室を設けました。それが生産性に結び付くからです。人がコネクトする頻度が高まれば高まるほど、仕事のやり直しや仕切り直しが減る。プロジェクトの早期の段階でコミュニケーション頻度を高めておくと、後になって「聞いてないよ!」の覆しが減るそうです。小さなことでも「どうかした?」という話になり、本当に困ってしまう前に対処できる。結果的に個人も組織もレジリエンスは強まります。

これだけ変化の激しい時代に会社は何もサポートしてくれない、尊敬できない上司は単にストレスの種、というのはよく聞く話。これを逆手に取って、自分を強くしていく、レジリエンスを鍛えていくいい機会、と考えを切り替えてほしいんです。

東洋経済 編集局記者

■投稿者情報
芝皮フ科クリニック 院長
須階 富士雄

東京慈恵会医科大学皮膚科を経て町田市民病院勤務
1993年 プラクリティ皮膚研究所開設
1996年 芝皮フ科クリニック開院
専門:アトピー性皮膚炎 レーザー治療
- 日本皮膚科学会会員、日本温泉気候物理医学会会員

芝皮フ科クリニックには、様々な患者さんが来院しますが、何といっても多いのがアトピー性皮膚炎の方です。現場医療に携わる人間として、是非治してあげたい!
苦しみから一時も早く解放してあげたい!という強い気持ちから研究を重ね、たどり着いた改善法は「肌を強く育てること」。
薬で痒みを抑えるだけではなく、天然成分を使用した保湿クリームでアトピーを改善する「ATP-C・U・Eゲル」の開発に成功しました。
即効性の点ではステロイドに劣るものの、肌が生まれ変わるサイクルを整え、掻いても傷にならない強い皮膚を目指します。

連絡先電話番号:0120-419-034
ウェブサイト :http://www.shiba-clinic.com/