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ため息つくと「幸せが逃げる」? 実は体にいいんです緊張ほぐし、自律神経のバランスを調整

だれが言い出したのかは知らないが、「ため息をつくと幸せが逃げる」なんて言葉がある。確かに、ため息を吐く姿って、いかにも疲れた感じでつらそうだ。「はぁ~」と息が漏れる音を耳にするだけで気がめいってしまうこともある。

 だから一般的には、ため息にマイナスのイメージを抱いている人が多いだろう。

 だが、体の機能の面から見ると、ため息はとても役に立つものだという。「幸せが逃げる」どころか、むしろ「体にいいもの」なのだ。

 「ため息は、バランスが崩れた自律神経の働きを回復させようとする、体の作用。いわば、機能回復のためのリカバリーショットといえます」。順天堂大学医学部教授で、自律神経の働きを研究する小林弘幸氏はこう話す。

■息を長く吐くと自律神経のバランスが整う

 ため息がふと出るのは、心配事や悩みを抱えているとき。そんなときの体は、胸やお腹の筋肉が緊張して硬くなり、呼吸が浅くなっている。

 すると、血液の中の酸素が不足気味になる。それを補うため、体は交感神経を働かせて血管を収縮させる。血圧を上げ、全身への酸素供給を維持しようとするわけだ。

 「交感神経」は自律神経の一種。血圧や心拍数を高めて体を活性化する作用を持つ。一方、体をリラックスさせるのは「副交感神経」。両者はいわば、アクセルとブレーキの関係だ。

 自律神経のバランスを保つのは、健康の基本だ。でも、心配事を抱えた人の自律神経は、どうしても交感神経優位に偏りがちなのである。

 「ため息は、この偏りを解消します。息を『ふーっ』と長く吐くことで、浅くなった呼吸が深くなり、副交感神経がしっかりと働くのです」と小林氏は話す。

■ストレスで優位になった交感神経は2時間は元に戻らない

 自律神経は、呼吸や心拍、血流、内臓の働き、体温調節といった、体のさまざまな働きをコントロールしている。その多くは、私たちの意識が及ばないところで稼働するため、働きぶりは意外と実感しにくいが、「自律神経がなければ、私たちの体は1秒たりとも生きていけません」(小林氏)というほど重要なものだ。

 通常の生活サイクルの中で、交感神経と副交感神経は、一方が強まると他方が収まるといった具合に、シーソーのようにバランスをとりながら働いている。たとえば1日の中で、日中は交感神経が優位になって活動的な状態をつくり、夜は副交感神経が優位になって心身ともにゆったりする。状況に応じて両者の間をスムーズに行き来するのが健全な状態といえる。

 「しかし、ストレスが多い現代社会では、交感神経優位に偏ってしまう人が多いのです」(小林氏)

 体はストレスを感じると、交感神経を強く働かせる。そしていったん優位になった交感神経は、放っておくと2時間は元に戻らないという。「夜遅くまで残業すると、横になってもなかなか寝付けないのは、交感神経の優位が尾を引くからです」と小林氏。

 大事なのは、緊張と弛緩(しかん)の切り替え。ため息は、交感神経の優位が長期化する前にリセットをしてくれるわけだ。なかなか頼りになるヤツなのである。

■本当に疲れきったらため息も出ない

 ところで小林氏によると、自律神経のトラブルには、交感神経が優位になる「アンバランス型」のほかに、「トータルパワー不足型」というタイプもあるという。

 「交感神経と副交感神経の働きは、数値化して測ることができます。バランスよく両方とも高い数値になるのが理想で、交感神経だけが強いのはアンバランス型です。最近はこれ以外に、数値が両方とも落ちているタイプが目立ちます」(小林氏)

 これは、言ってみればアクセルもブレーキも動かない状態。「体が疲れきって、自律神経の働きが全体的に低下しているのです。交感神経優位の状態からのリカバリー的な調節も、まともに機能しないでしょう」と小林氏。アンバランス型よりさらに深刻といえる。

 そんな状況になると、ため息は?

 「ため息をつきたいことに、自分で気づかないかもしれませんね」

 うーん、そうなのか。それに比べたら、「つい、ため息が出てしまう」状態は、体がリカバリーをしようとしているわけで、まだ健全といえるのかも。

 「そう、ため息が出ているうちはまだいいと思って、バランスの改善に取り組んでください」(小林氏)

■ため息が続いたら交友関係を見直す?

 ため息は、リカバリーショット。崩れたバランスを立て直す作用はあるが、それはあくまでも対症療法だ。

 「ため息に気付いたら、自分が何にため息をついたのかを考えるべきでしょう」と小林氏は言う。体は何かストレスを感知したから緊張し、ため息でそれをほぐそうとした。ならば、緊張の大元は何?と考えてみるわけだ。

 つまり、ため息を通じて私たちは、自分が抱えるストレス源をあぶり出すことができる。そこで浮かぶ問題をどうするか。どうにかしなければ、いつまでもため息をつき続けることになるだろう。

 「今の社会で、ため息をつきたくなる理由のほとんどは、対人関係の問題。もし同じ問題で連日10回もため息をついているようなら、交友関係を考え直してもいいのでは」(小林氏)

 「ため息ぐらいで大げさな」と思うかもしれない。だが、「ストレスを我慢し続けて体を壊すのはバカげています」と小林氏は話す。

 ため息はストレスのサイン。それをどう受け止めるかは、自分次第だ。そう考えると、「ため息をつくと幸せが逃げる」という冒頭の言葉は、「ため息をつくだけでは幸せになれない。問題の根本を直視しなさい」という意味にも取れる。

 なるほど。ため息一つにも、意外と深い意味が隠れているようだ。

(北村 昌陽=科学・医療ジャーナリスト)
日経Gooday

■投稿者情報
芝皮フ科クリニック 院長
須階 富士雄

東京慈恵会医科大学皮膚科を経て町田市民病院勤務
1993年 プラクリティ皮膚研究所開設
1996年 芝皮フ科クリニック開院
専門:アトピー性皮膚炎 レーザー治療
- 日本皮膚科学会会員、日本温泉気候物理医学会会員

芝皮フ科クリニックには、様々な患者さんが来院しますが、何といっても多いのがアトピー性皮膚炎の方です。現場医療に携わる人間として、是非治してあげたい!
苦しみから一時も早く解放してあげたい!という強い気持ちから研究を重ね、たどり着いた改善法は「肌を強く育てること」。
薬で痒みを抑えるだけではなく、天然成分を使用した保湿クリームでアトピーを改善する「ATP-C・U・Eゲル」の開発に成功しました。
即効性の点ではステロイドに劣るものの、肌が生まれ変わるサイクルを整え、掻いても傷にならない強い皮膚を目指します。

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